2013年5月7日火曜日

天然酵母パンの秘密

「リアルフード」という言葉を聞いたことがありますか?
文字通り「本物の食べ物」という意味です。
日本ではあまり必要のない言葉かもしれませんが、アメリカではリアルフードを探すのはちょっとした努力が必要です。

アメリカのスーパーは日本に比べるとかなり巨大です。
初めて訪れた時は、その大きさと種類の豊富さにただただ圧倒されました。
で、何が場所を占めているのかというと、ほとんどは加工食品なのです。
冷凍庫にはレンジで数分温めるだけの、「TVディナー」がずらりと。
ピザはもちろん、朝食用のワッフルまで。
スナック売り場では、大きなバッグのチップスが所狭しと並んでいます。
シリアルの数も半端ではありません。

加工食品には、添加物はもちろんのこと、遺伝子組み換えされた原材料が使われています。
アメリカでは遺伝子組み換えの表示義務がありません。
国内に出回っている大豆やコーンのほとんどが遺伝子組み換え品だと言われています。
そして、このコーンや大豆は驚くほど多くの加工食品に使われています。
家畜の飼料は今ではほとんどが大豆ベース。
スーパーで買うお肉は牛にしろ豚にしろチキンにしろ、皆遺伝子組み換えされた大豆を食べて育てられたものです。
コーンが材料になるコーンシロップ(ハイフルクトースコーンシロップも含めて)も、スーパーで売っている甘いお菓子やソーダ、シリアル等に使われています。

こうした中で、昔から食卓に並んでいた食べ物を探すとなると、オーガニックフードに頼るしかありません。
遺伝子組み換え食品が材料に含まれているとオーガニックと認定されないからです。

と、前置きはこのくらいにして、今日はパンの話題です。
最近小麦に含まれているグルテンがかなり悪者扱いされています。
スーパーでも「グルテンフリー」と表示された食品が一昔前に比べるとかなり頻繁に目にするようになりました。
オンラインでも、グルテンを食べないようにしているという書き込みがたくさんあります。
なぜこんなにグルテンが敵視されているのでしょうか?

グルテンは牛乳に含まれるカゼインと並んで、実はとても消化しづらいタンパク質なのです。
昔から小麦アレルギーがありましたが、最近ではその数も急増しているそうです。
この背景には、近年の小麦はグルテンが強化されているということがあげられます。
パンを作る時、グルテンが多く含まれる粉を使って練ったりたたいたりしてグルテンを発達させると柔らかいフカフカのパンになりますよね。
食パンなどのボリュームを出したり、柔らかくしたいパンには、グルテンが多めの強力粉を使います。
逆に、日本産の小麦は外国産の小麦に比べるとグルテンが少ないので、うどんや、あんぱん等の、ボリュームを押さえたものに使われます。

さて、最近アメリカでは、肥満や生活習慣病の原因は実は今まで言われてきた脂肪やコレステロールではなく、炭水化物の取り過ぎがよくないのではという見方が増えています。
アメリカで炭水化物といったら、ほとんどが小麦です。パンもパスタもシリアルも、グルテンが含まれています。

健康な人だったらグルテンも問題なく消化できるのですが、加工食品がスーパーの大部分を占めるこの国にとって、実は消化器官が正常に機能していると言う人がどのくらいいるのでしょうか。

アレルギーをはじめとする疾患は、消化器官の炎症や腸内バクテリアのバランスが崩れて未消化の食物が体内に残ることから起こるという見解があります。
人の体内には体を構成する細胞以上のバクテリアが存在しています。
食品添加物、加工食品や遺伝子組み換え食品は、従来から人が食べ、消化してきたものとは違います。そうすると、体はうまく消化することができず、徐々に腸内が荒れていきます。
胃腸が荒れ、腸内バクテリアのバランスが崩れ、悪玉菌が増えてくると、さらに消化環境が悪くなります。
そうするとちょっと複雑なものが消化できなくなる。アレルギーの多い牛乳や大豆も実は消化しづらい食品のトップリストなのです。

こうして長年に渡る食生活でダメージを受けてしまった腸内環境を改善しようとしている人たちが探し求めているのが先に挙げた「リアルフード」です。
今からお話するサワードー(サワー種のパン)も、スーパーでイーストが売られる前には普通に作られていた伝統的なパンなのです。

子供達のスイムチームでは年に数回パーティーがあります。
パーティーと言っても、親が食べ物を持ち寄って、練習の後にそれを食べるだけなのですが、
あるパーティーの時、13歳ぐらいの女の子がピザやサンドイッチがあるにもかかわらず、フルーツだけを取って食べていました。彼女のお母さんが、
「うちの子はグルテンを食べないの」
と言っていたのでどうしてか尋ねると、お嬢さんが一時期原因不明の体調不良で、ベッドから起き上がれないくらいだったというのです。医者に行っても原因もわからず、何をしてもぼーっとしてしまって、しばらく学校にも行けなかったと。きっかけは聞きませんでしたが、グルテンを食べるのをやめたら急によくなったので以来グルテンは食べていないのだそうです。お嬢さんも食べたがる様子もなかったのでよほどつらい思いをしたのでしょう。

そういう話を実際に聞くと、グルテンってよくないのかなと思ってしまいます。
私はグルテンに敏感な訳ではありませんが、去年あたりから胃腸の調子が悪く、頻繁に下腹部が痛くなるようになりました。
食事前にエンザイムを飲むと痛まないのですが、外食したり、友人宅で食べたりすると十中八九痛くなります。やはり腸内環境がよくないのだなと思い、それも食べものに気をつけるきっかけとなりました。

何はともあれ、グルテン、どうしようかなと思っている時に、発酵食品を推進しているドナさんのサイトでこんな記事を見つけたのです。リソースはここ。

これによると、冷蔵庫で長時間発酵させたサワードーブレッドはグルテンにアレルギーのある人でも食べられるというのです。
善玉菌が長時間の発酵過程でグルテンを消化してくれるらしいのです。
何と!!
最近消化のことを考えて、オーガニックや発芽パンを買っていたので、コストも馬鹿にならないし、だったら作ってみようか。ということで種おこしから始めました。
純粋なサワー種とは違いますが、昔作ったことのあるレーズンから種を起こします。

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レーズンをかぶる程度の水につけて数日置いておくと、レーズンについた菌が発酵を初めて泡を出します。

泡が収まってきたらレーズンを漉して、このレーズン液に全粒粉を混ぜ、倍に膨らんだらまた粉を足す。
これを三回繰り返したら天然酵母の出来上がり。
パンを膨らませるのに十分な菌が繁殖しているはずです。

天然酵母の作り方はオンラインでたくさん載っているので参考にしてください。

この酵母120gに粉300g、水180cc、塩5gで焼いたパンがこれ。
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粉は全粒粉と白い粉を半々にしました。
これでは発酵はせいぜい1日が限界。冷蔵庫でも二日で生地が膨らんでしまいます。
LAに昔からあるベーカリーによると、よく捏ねて、何日も冷蔵庫で低温発酵させたサワードーブレッドはグルテンアレルギーの人が食べても問題ないとのこと。
何日も冷蔵庫で発酵させるには、もう少し酵母を減らして粉や水の量を増やさないといけませんね。
ということで今そちらは試行錯誤中です。

最近はなぜかパンを食べる量が減ったので作る量も減りましたが、一時期は毎日、多いときには一日2度も焼いていました。
焼いたパンとファーマーズマーケットで買った卵で卵サンドを作った時の写真。
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ここのファームはフリーレンジのオーガニックチキンを育てています。
フリーレンジというのは、狭い室内に閉じ込められているのではなく、外に自由に出入りしてそこで虫をつっついたり本来の鳥がする活動ができる環境ということです。
卵の大きさや色が違い、割ると黄身の大きさや色もそれぞれ違うのが自然っぽくて気に入りました。
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何の変哲もないエッグサンドイッチですが、エンザイムなしで食べてもお腹が痛くなる心配はありません。
自家製天然酵母パンは、お財布にもやさしいです。
お店でオーガニックの天然酵母を買うと、安くても半ローフで3ドル。
オーガニックの食パンや発芽小麦を使ったパンは一斤4ドルはします。
家で作ると、オーガニックの小麦粉は5ドルほど。これで約1ヶ月はもちます。

リアルフードは準備に時間がかかりますが、便利さばかりを求めて加工食品や冷凍食品に走った過去を反省して、多少時間がかかってもなるべく手作りを心がけている今日この頃です。

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